2025年08月28日

雑誌でつながる学びの場「東京マガジンバンクカレッジ」

今週のゲストは東京都立多摩図書館情報サービス担当の井上郁哉さんです。

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都立多摩図書館では「東京マガジンバンクカレッジ」という活動を展開しています。
これは10年前の国分寺移転時に始まった取り組みで、「雑誌の魅力を知る、作る、伝える」というコンセプトのもと、雑誌を仲立ちとした学びや交流の拠点づくりを目指しているそうです。
カレッジではパートナー制度を実施しており、雑誌やカレッジの活動に興味がある個人や都内の団体が参加できます。パートナーになると、年に1回程度の交流会への参加や、イベント情報・雑誌記事の紹介を掲載したメールマガジンの配信を受けることができます。

カレッジでは毎年雑誌に関連したイベントを開催!
今年6月末には国立天文台の方を招いて天文関係のイベントを実施しました。
講師は天文雑誌に連載記事を書いており、その連載の裏話や、水星をテーマにした天文雑誌との思い出を語る講演会となったそうです。
講演会はパートナーに限らず誰でも参加可能で、パートナー制度も無料だといいます。

また図書館の重要なサービスがレファレンスサービス。
皆さんは利用されたことありますか?

これは調べたいことや探している資料について、司書が必要な資料や情報を案内するサービスです。来館してカウンターで質問するほか、電話や手紙、メールでも受け付けているそうです。ただし医療や法律の診断、学校の宿題や懸賞はがきのクイズなどは対象外となっています。

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2025年08月28日

図書館の新たな役割と未来への展望

今週のゲストは東京都立多摩図書館情報サービス担当の井上郁哉さんです。

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都立多摩図書館では現在、「1年後、5年後、10年後、どんなふうに生きていく?」という青少年向けの企画展示を10月1日まで開催しています。

中高生世代におすすめの本や、将来について考えることができる本を展示しており、学校以外を舞台に活躍する10代が出てくる本や、大学生活、仕事、家族のあり方など、今後の人生に関わる可能性があることについて書かれた本が並んでいるそうです。

「これらの企画イベントについては、図書館の司書がそれぞれアイディアを出し合って、最終的には多数決であったりとか話し合いとか、あとはその司書個人個人がどういった本を紹介したいかとか、職員全員で話し合って決めていっています」

またデジタル化が進む中での図書館の存在意義について尋ねると、井上さんは現代の図書館の変化を指摘しました。電子書籍など図書館に来なくても本が読める時代になってきている一方で、カフェが併設されている図書館やイベントを多く実施している図書館も増えており、本を読んだり借りたりする場所としてだけでなく、人々の日常生活を支えたり、来館者同士の交流の場所となるような使い方がトレンドになっているといいます。

ちなみに井上さんが行ってみたい図書館はフィンランドの「ヘルシンキ中央図書館」。
2019年度のPublic Library of the Yearに選ばれたこの図書館は、本や雑誌だけでなく3Dプリンターやゲームの貸し出し、ワークショップスペースなど、従来の図書館の枠を超えた機能を持っているそうです。
本を通じて人々をつなぎ、コミュニティの拠点として進化し続ける図書館の姿を垣間見ることができました!

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2025年08月26日

創刊号から絶版誌まで収集する東京マガジンバンクの世界

今週のゲストは東京都立多摩図書館情報サービス担当の井上郁哉さんです。

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東京マガジンバンクは、書店で見かける一般的な雑誌から、専門誌、大学や企業が発行する学術誌まで幅広く収集しており、令和7年3月末時点で約1万9000タイトルを所蔵!特に女性誌と鉄道関連誌を重点収集しています。

「東京マガジンバンクを開設した当時、様々なジャンルの雑誌の中から利用者ニーズが高い分野、誰もがイメージしやすい分野、文化として残っていく分野、そして利用促進につながったり戦略的サービス展開に活かせる分野ということで、女性誌と鉄道誌の二つのジャンルを選定して重点収集しております」

またユニークなものが創刊号コレクション。最も古いものは明治10年(1877年)に出版された経済誌「中外鉱業新報」だといいます。明治時代は商工業やビジネス誌が多く創刊され、明治30年創刊の「実業之日本」なども所蔵されています。

さらに東京マガジンバンクでは、現在刊行されている雑誌だけでなく、休刊・廃刊したものも基本的に永年保存しており、現在休刊しているものだけで約1万数千タイトルを所蔵しているそうです。また地方誌の収集にも力を入れており、九州から北海道まで日本全国の雑誌を幅広く収集しています!!

貸出はしていませんが、どなたでも閲覧可能です!ぜひ一度足を運んでみては??
https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/guide/tama_library/

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2025年08月25日

雑誌文化の保存と発信に取り組む東京マガジンバンク

今週のゲストは東京都立多摩図書館情報サービス担当の井上郁哉さんです。

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井上さんは1996年福岡県生まれ。明治大学国際日本学部を卒業後、一般企業を経て、都内の区立図書館で働きながら司書資格を取得されました。2021年から東京都立多摩図書館で、週刊誌から学術雑誌まで幅広い雑誌を収集・提供する「東京マガジンバンク」の運営に携わっています。

都立図書館は中央図書館と多摩図書館の2館で構成され、それぞれが機能を分担してサービスを提供しています。国内の公立図書館の中でも最大級の資料を所蔵し、調査研究から身近な生活情報まで幅広く支援するとともに、都内の区市町村図書館へのバックアップを行う「図書館の図書館」としての役割も果たしているそうです!

東京マガジンバンクの歴史について、井上さんは、こうお話してくれました。
「多摩地域にあった旧都立立川、青梅、八王子図書館という3つの図書館を統合する形で、1987年に都立多摩図書館ができました。その3館のうち立川図書館が逐次刊行物センターという機能を持っていて、そこで雑誌の収集を始めていました。それを継承する形で2009年に東京マガジンバンクが開設されました」

都立多摩図書館は、JR中央線・武蔵野線の西国分寺駅から徒歩7分、
都立武蔵国分寺公園に隣接した場所にあります。
館内には閲覧室のほか、カフェスペースやセミナールームも備えています。
開館時間:
月〜金曜日:午前10時〜午後9時
土・日・祝休日:午前10時〜午後5時30分

どなたでも利用可能、
仕事帰りの利用者にも配慮した運営となっています!

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2025年08月21日

地名の変遷と世界の地図文化

今週のゲストは、地図研究家の今尾恵介さんです。

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今尾さんは地名マニアとしての一面もあり、昨年PHP研究所から『地名の魔力』という本を出版されました。地名には興味深い歴史があるといいます。

銀座の地名について、今尾さんはこう語ります。
「銀座ってブランド地名ですよね。関東大震災の後に震災復興事業をやったときに、町の名前を統廃合したんですけど、そのときに銀座がものすごく増えたんです。それまで1丁目から4丁目の中央通り沿いにしかなかったのが、5丁目から8丁目まで出てきて、さらに幅が広くなったんですね。」

昭和30年頃には「尾張町」などが「銀座東」になり、結果として震災以前からあった銀座は、現在の銀座の面積の9%しかないそう...!!

そして5月に出版された『地理院地図の深掘り』。
実は今尾さんでさえ『地理院地図』の全貌を知らないとのこと...!!
「あまりにも機能が多くて紹介しきれなかった」と謙遜しつつ
「地理院地図の初心者の方がいらしたら、読んでいただくととても参考になると思います」とおっしゃっていました。

住んでいる地域や、働いている場所など、身近な場所を見てみると、新しい学びや発見があるかもしれません!!是非みなさんも、使ってみてください!
地理院地図はこちらから、アクセスできます!

また今尾さん、今後の計画について伺ったところ、、、
『鉄道の山越え』をテーマにした本を来年夏頃に出版予定!!
日本だけでなくヨーロッパも視野に入っているとのこと...!

「日本のものが中心なんですけど、清水トンネルや碓氷峠を越えるために、昔から苦労して線路を敷いてきたわけですが、その辺をテーマにした本を出すつもりでいますね。」

地図神さんの新たな作品...!楽しみです!

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2025年08月19日

国土地理院が提供する多機能な地理院地図

今週のゲストは、地図研究家の今尾恵介さんです。

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今尾さんは、この5月にPHP研究所より新刊『地理院地図の深掘り』を出版されました。
地理院地図とは、国土地理院が提供するウェブ地図のことです。国土地理院は日本の地図の大元を作っている機関で、従来は紙の地形図を出版していましたが、10年以上前からインターネットで無料で見られる地形図の提供を始めました。

地理院地図の特徴について、今尾さんはこう説明します。

「最初は地形図機能だけだったんですけど、そのうち土地の高さ低さがわかるみたいな機能も加わりました。画面の中心にプラス形があって、そこの経度・緯度、土地の高さが表示されるんです」

さらに、距離測定機能では自宅から学校までの241メートルといった身近な距離から、東京からウラジオストックやロンドンまでの距離も測ることができます。

特に注目すべきは、地形分類図というレイヤー機能。
これを重ねると、泥が溜まってできた沖積地は薄緑色、安定した台地はオレンジ色、盛土は赤、切土は黄色で表示され、土地の履歴が一目でわかるといいます。

J-WAVEがある六本木は今尾さんによると「六本木は非常に安全な場所」だそうです。

「武蔵野台地という非常に昔から台地だったところで、そのてっぺんの面なので、地盤が安定している。周辺には谷が入り込んでいて、その谷のてっぺんが六本木なんです」

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2025年08月18日

地図から風景を読み取る楽しさ

今週のゲストは、地図研究家の今尾恵介さんです。

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今尾さんは1959年横浜市生まれ。これまでに多くの地図関連書籍に関わる地図研究の第一人者で、著書には『地図マニア空想の旅』や『地図帳の深読み』シリーズ、また5月には新刊『地理院地図の深掘り』(PHP研究所)が発売されました。これまでにかかわった本は既に100冊以上にのぼります。

地図との出会いは中学1年生の社会科の授業でした。今尾さんはこう語ります。
「横浜の西の方なんで横浜西部という2万5,000分の1の国土地理院の地形図なんですけど、それを見て、今までは神奈川県全図だとか関東地方の図みたいのしか見たことなかったんで、これはすごいなと。校舎がちゃんとこっちの校舎とあっちの校舎が分かれて書いてあって、プールも青く塗られていたんで、これすごい地図だなと思って一気にはまっちゃった」

もともとは音楽系雑誌の編集者だった今尾さん。大学時代はオーケストラに所属し、現在もアマチュアオーケストラ「新交響楽団」で打楽器奏者として42年間活動を続けています。

多くの人にとって地図は道を調べるツールですが、今尾さんにとっては少し違います。
今尾さんによると、地形図は「風景が見える地図」だといいます。

「地形図っていうのは風景が見られる地図なんですよ。ここが針葉樹林であるとか田んぼであるみたいなそういうのが記号で書いてありますので。スマホで見る地図なんていうのは道案内には関係ないので地図記号がないんですね。等高線もないので、この場所が盛り上がってるだとか崖になってるみたいなものがあんまりわかんないんです。」

地図から立体的な風景を頭の中に描き出す、スマホの地図アプリではわからない、地図の魅力を教えていただきました!

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2025年08月14日

ごみ収集が担う新たな福祉的役割

今週のゲストは立教大学コミュニティ福祉学部教授の藤井誠一郎さんです。

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清掃事業が従来のごみ処理を超えて、福祉的な役割を担うようになっているそう。

例えば高齢者のごみ出し困難者に対する「訪問収集」では、職員が直接家庭を訪問してごみを収集します。これは単なるごみ収集ではなく、安否確認の機能も果たしています。

「ごみが出ているというのを認識することで、これ安否確認になるわけです。二、三日出てなければ福祉の部署に電話して、これどうなってるんでしょうかというところを見に行っていただく。」

また札幌市での印象的な事例もご紹介いただきました。
というのも、雪の多い冬季には、訪問収集の職員が高齢者にとって唯一の話し相手になることもあるそうです。わずか3分程度の会話でも、高齢者の方が楽しみにしている様子を目の当たりにし、まさに福祉サービスだと実感したといいます。

東京23区では防犯上の理由から外に出されたごみを収集するだけですが、地方では玄関先でのコミュニケーションも行われており、住民との対話がごみ収集を通じて実現されています。

最後に藤井さんは現業職の価値を強調していらっしゃいました。
自治体では人員削減や委託化が進んでいますが、現業職だからこそできる住民サービスがあり、彼らが新たな街づくりや住みやすい地域社会づくりに貢献できるとおっしゃっていました。

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2025年08月13日

エッセンシャルワーカーとしての清掃事業の実態

今週のゲストは立教大学コミュニティ福祉学部教授の藤井誠一郎さんです。

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清掃事業は「収集運搬」「中間処理(ごみを燃やす)」「最終処分」という3つの工程で成り立っています。
ちなみに東京の最終処分場である新海面処分場は、あと50年の容量しかないそう!!
ごみを減らし、セメントや路盤材として活用する取り組みも進められています。

東京23区では、収集運搬は区、中間処理は東京23区清掃一部事務組合、最終処分は東京都と、25の自治体が分担しており、これが問題を生んでいます。

「本来ならば収集運搬・中間処理・最終処分が一連の過程にならないといけない。ところがそれが分断されている。自分のところだけが適正化されればいいという発想になってしまう。」

藤井さんによると、一つの自治体が全工程を管理していれば、最終処分場の限界を意識してごみ削減を呼びかけたり、清掃工場の火災を防ぐために分別を徹底したりと、後の処理を考えて前の処理を適正化できるはずとのこと。

またコロナ禍ではエッセンシャルワーカーという言葉が注目されましたが、清掃事業こそまさにその代表。しかし現場では、細い路地で作業中に「早くしろ」と言われることや、清掃車の横を鼻をつまんで通る人もいるそうです。
差し入れをしてくれる人もいますが、多くの人は「誰でもできる仕事」と思っているのではないかと指摘されていました。

「すべてのゴミを取るのではなく、分別されていないごみを瞬時に判断し、清掃工場の火災などを防ぐため、収集してはいけないものを残していくなど、高度な判断力が求められる、結構神業ですね。」

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2025年08月12日

ごみ収集現場から見えてくる社会の課題

今週のゲストは立教大学コミュニティ福祉学部教授の藤井誠一郎さんです。

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藤井さんは、1970年広島県生まれ。同志社大学を卒業後、同大学の職員として勤務。
その後社会人学生として、同志社大学大学院、博士課程修了。現在は立教大学で教鞭をとられています。専門は地方自治論、行政学などで、特に、ゴミ収集・清掃事業について、現場の視点から研究を続けていらっしゃいます。著書には『ごみ収集の知られざる世界』(ちくま新書)などがあります。

当初は地域活性化の研究をしていましたが、早稲田大学の研究者がごみ収集車に乗って研究したという話に感銘を受け、自らも現場に飛び込む決意をしたといいます。
東京に来て、新宿東清掃事務所で約9ヶ月間、毎週ごみ収集車に同乗し、実際に作業も体験しました。新宿という大都市の現場では、分別が不十分な地区もあり、ごみの実情を目の当たりにしたそうです。

「これだけの仕事をやっているにも関わらず、社会から誰でもできる仕事だと思われている。みんなの役に立つ仕事をしている割には馬鹿にされているところもありました。それがすごく悔しかった。」

一生懸命働いているのに評価されていない現状を世間に伝えていかなければならないという使命感から、最初の著書『ごみ収集という仕事 : 清掃車に乗って考えた地方自治』(コモンズ)では現場の実態を詳しく描いたということです。

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2025年08月07日

建築の枠を超えて、新しい社会インフラを目指す

今週のゲストは建築家で東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さんです。

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従来の建築家の枠を超えた活動をする豊田さん。
というのも、コンピュテーショナルデザインで建築のデジタル情報を扱ってると、それが建築以外の領域でも価値を持つ、可能性がありそうなものだと考え、実践しているということ。
最終的に目指しているのは新しいライフスタイルの実現だといいます。
「寝たきりの子が病院からもアバターで授業に参加して友達と楽しめるとか、地方にいながら渋谷区の小学校に通い続けられるから、森の中から授業に出られるみたいなライフスタイルを提供したい」

また、豊田さんは大阪・関西万博の誘致段階からかかわっており、コモングラウンド的な概念を実装する社会実験の場として位置づけていました。改めて、万博に対するリアルな感想も伺いました。

そもそも、万博会場には住民がいないことから、『社会実験の場にしていきましょう』というのが、誘致段階の一番のコアのアピールだったそう。
しかし、コロナ禍やAIなどの新技術への社会的な見方の変化により、「未来の技術とかスマートシティみたいなことに対しては手放しでポジティブにだけはいられない環境になっている」と現状を分析していました。

最後に今後の展望について、、、
大学の立場としては
「コモングラウンドっていうのがどういうふうに新しい社会のインフラになっていくか。それをいろんな企業さんとか国とかと一緒に実装検証をしていきたい」

そして建築家としては
「どこにいても、いろんな参加ができるんだったら次は自分はどこでどんな生活したいのかとか、そのときに欲しい環境ってどんなのかな」と、自らも新しいライフスタイルを探求し続けているとおっしゃっていました。

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2025年08月06日

コモングラウンドが実現する新しい教育の形

今週のゲストは建築家で東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さんです。

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豊田さんが提唱する「コモングラウンド」の実証実験として、長野県茅野市と渋谷を繋いだ実験が行われました。

実際の実証実験では、高校生16人が参加し、ヨガの遠隔授業を受けました。参加者はヘッドマウントディスプレイを装着し、渋谷のヨガの先生が目の前にいるように見える状態で授業を受けます。
「ヨガの先生からも自分のポーズが見えてるんですね。ヨガの先生から見ると、ちょっと肘の角度がおかしいなと思ったら、ここをもうちょっと上げて、とかほらここに合わせてって、ほら、ここ、うん、こういうふうってやっぱり言葉が伝わらないじゃないですか。それが姿勢として目の前に見えるので、ヨガとか空手とか、そういうものが遠隔でも教えられる」

この技術により、東京で取得したデータを大阪の人に伝達するなども可能になり、離れたところにいる人が空間を重ね合わせることができるようになります。

「地方でも例えば学校が維持できなくなってると、これ単純に生徒の数が減ってるだけでもなくて、先生が全科目の人を維持できないとか、そういうことの方がむしろ問題だったりする。こういうコモングラウンド環境を使うと、東京の理科の先生が長野でも教えられるとか、山奥の校舎で数学を教えられるとか、いろんなワークショップができるみたいな関係ができる」

この技術の実現を後押しする方法について尋ねたところ、豊田さんからこんな答えが返ってきました。

「食わず嫌い的なことを、もうやめてと言うと変ですけど、、、色々どんどん楽しみながら捉えてもらえるといいかなと思っていて。東大でも体験していただけますし、遠隔授業以外にもエンタメで何ができるかとか、いろんな用途を探りながらやってるので、ぜひやってみて、こういうのもいいんじゃない?というアイデアをいただけるとすごく嬉しいです」

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2025年08月05日

アジアから発信する新しい建築の形

今週のゲストは建築家で東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さんです。

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アメリカから帰国後、豊田さんは建築事務所「noiz」を立ち上げました。
安藤忠雄建築研究所でのアナログな経験と、ニューヨークの『SHoPArchitects』でのコンピュテーショナルデザインという両極端の経験を経た故のものでした。

事務所名「noiz」について、豊田さんは、、、

「コンピュテーショナルデザインって当時、まだ日本とかアジアにほとんど入ってきてなかったんですね。それをアジアっていうこれまでと違う土壌でやった時に、どうなるのかってのは興味があって。予定調和を壊すというか、これまでの既成の価値観の外側にある価値を探ってみようと。ノイズっていうのはそういうことですよね。これまでのわかりやすい音楽じゃないところに新しい価値を探してみようみたいなことで、こういう名前になりました」

事務所はコロンビア大学の同級生で、プライベートのパートナーでもある台湾人のサイさんと共同で立ち上げ、台北と東京に拠点を構えています。

また豊田さんは現実世界とデジタル世界が重なり合う共有基盤「コモングラウンド」を提唱されています。これは元々AI研究の世界の概念で、京都大学の西田豊明先生が提唱されたものを空間に拡張したものです。

西田先生の理論について、豊田さんはこう説明します。

「西田先生は会話の中で、言葉が持つ辞書としての意味の背景に我々共通の認識というか理解があって、それがあるから秋の夕暮れって言ったときに赤とんぼの風景が浮かんだりとか夕焼けの空が見えたりとか、そういうものが共有されてるから会話が成り立つんだっていうのをおっしゃってて、それを僕らは空間に拡張したんです。」

ロボットに『ドア』といった時、何を想像するのか、、、
もともとの意味を拡張し、『空間理解をデジタルの中に記述する』というものだそう。

またさらに、ゲームの世界の概念を取り入れたことがポイントだといいます。

「建築だとCADとかBIMっていう設計図としての3Dデータ作るんですけども、これって動かないんですよ。地図とか建築図面が見るたびに内容が変わってたら困るので。でもゲーム空間ってもう100分の1秒単位で空間の記述をどんどんアップデートしていくから動いて見える。今は実空間でロボットとかモビリティを扱おうとすると、結局動的に記述を更新し続けなきゃいけないので、ゲームエンジンっていうものを建築とか都市で使ってみようっていうのを今、コモングラウンドの中でやっています。」

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2025年08月04日

デジタル技術で建築の新たな可能性を切り拓く

今週のゲストは建築家で東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さんです。

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豊田さんは1972年生まれ、東京大学建築学科を卒業後、安藤忠雄建築研究所を経て、コロンビア大学建築学部修士課程を修了。建築デザイン事務所「noiz」代表として、コンピュテーショナルデザインを積極的に取り入れた活動を展開されています。

コンピュテーショナルデザインとは、デジタル技術を使ってデザインをすること。
ただ図面を引くだけではできない形や発想を、デジタル技術を使うことで可能にしていこうという取り組みです。

これはAIとは異なり、あくまで人間が行うもの。
「建築家が、これまで通りに図面を書くとか模型を作るっていう発想だと、出なかったようなアイディアとか形を、新しいコンピュータの造形や制御する能力を使うことで、いろいろと違う可能性が見えてくるんです。」

豊田さんは大学卒業後、安藤忠雄建築研究所に入られ、
1996年から2000年まで在籍。
淡路夢舞台や四国の光明寺、フォートワース現代美術館のコンペなどを担当されたそう。
その後はコロンビア大学の建築計画歴史保存学部へ留学、修了後はニューヨークの建築事務所「SHoP」で勤務され、ここはコンピュテーショナルデザインの最先端事務所でした。
「安藤事務所がすごくアナログで、いい意味でアナログですごく20世紀的な建築をやっていたのに対して、やっぱりせっかくなんで、全然違う方を極端にやってみたいなと思って」

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