2025年08月13日

エッセンシャルワーカーとしての清掃事業の実態

今週のゲストは立教大学コミュニティ福祉学部教授の藤井誠一郎さんです。

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清掃事業は「収集運搬」「中間処理(ごみを燃やす)」「最終処分」という3つの工程で成り立っています。
ちなみに東京の最終処分場である新海面処分場は、あと50年の容量しかないそう!!
ごみを減らし、セメントや路盤材として活用する取り組みも進められています。

東京23区では、収集運搬は区、中間処理は東京23区清掃一部事務組合、最終処分は東京都と、25の自治体が分担しており、これが問題を生んでいます。

「本来ならば収集運搬・中間処理・最終処分が一連の過程にならないといけない。ところがそれが分断されている。自分のところだけが適正化されればいいという発想になってしまう。」

藤井さんによると、一つの自治体が全工程を管理していれば、最終処分場の限界を意識してごみ削減を呼びかけたり、清掃工場の火災を防ぐために分別を徹底したりと、後の処理を考えて前の処理を適正化できるはずとのこと。

またコロナ禍ではエッセンシャルワーカーという言葉が注目されましたが、清掃事業こそまさにその代表。しかし現場では、細い路地で作業中に「早くしろ」と言われることや、清掃車の横を鼻をつまんで通る人もいるそうです。
差し入れをしてくれる人もいますが、多くの人は「誰でもできる仕事」と思っているのではないかと指摘されていました。

「すべてのゴミを取るのではなく、分別されていないごみを瞬時に判断し、清掃工場の火災などを防ぐため、収集してはいけないものを残していくなど、高度な判断力が求められる、結構神業ですね。」

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2025年08月12日

ごみ収集現場から見えてくる社会の課題

今週のゲストは立教大学コミュニティ福祉学部教授の藤井誠一郎さんです。

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藤井さんは、1970年広島県生まれ。同志社大学を卒業後、同大学の職員として勤務。
その後社会人学生として、同志社大学大学院、博士課程修了。現在は立教大学で教鞭をとられています。専門は地方自治論、行政学などで、特に、ゴミ収集・清掃事業について、現場の視点から研究を続けていらっしゃいます。著書には『ごみ収集の知られざる世界』(ちくま新書)などがあります。

当初は地域活性化の研究をしていましたが、早稲田大学の研究者がごみ収集車に乗って研究したという話に感銘を受け、自らも現場に飛び込む決意をしたといいます。
東京に来て、新宿東清掃事務所で約9ヶ月間、毎週ごみ収集車に同乗し、実際に作業も体験しました。新宿という大都市の現場では、分別が不十分な地区もあり、ごみの実情を目の当たりにしたそうです。

「これだけの仕事をやっているにも関わらず、社会から誰でもできる仕事だと思われている。みんなの役に立つ仕事をしている割には馬鹿にされているところもありました。それがすごく悔しかった。」

一生懸命働いているのに評価されていない現状を世間に伝えていかなければならないという使命感から、最初の著書『ごみ収集という仕事 : 清掃車に乗って考えた地方自治』(コモンズ)では現場の実態を詳しく描いたということです。

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2025年08月07日

建築の枠を超えて、新しい社会インフラを目指す

今週のゲストは建築家で東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さんです。

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従来の建築家の枠を超えた活動をする豊田さん。
というのも、コンピュテーショナルデザインで建築のデジタル情報を扱ってると、それが建築以外の領域でも価値を持つ、可能性がありそうなものだと考え、実践しているということ。
最終的に目指しているのは新しいライフスタイルの実現だといいます。
「寝たきりの子が病院からもアバターで授業に参加して友達と楽しめるとか、地方にいながら渋谷区の小学校に通い続けられるから、森の中から授業に出られるみたいなライフスタイルを提供したい」

また、豊田さんは大阪・関西万博の誘致段階からかかわっており、コモングラウンド的な概念を実装する社会実験の場として位置づけていました。改めて、万博に対するリアルな感想も伺いました。

そもそも、万博会場には住民がいないことから、『社会実験の場にしていきましょう』というのが、誘致段階の一番のコアのアピールだったそう。
しかし、コロナ禍やAIなどの新技術への社会的な見方の変化により、「未来の技術とかスマートシティみたいなことに対しては手放しでポジティブにだけはいられない環境になっている」と現状を分析していました。

最後に今後の展望について、、、
大学の立場としては
「コモングラウンドっていうのがどういうふうに新しい社会のインフラになっていくか。それをいろんな企業さんとか国とかと一緒に実装検証をしていきたい」

そして建築家としては
「どこにいても、いろんな参加ができるんだったら次は自分はどこでどんな生活したいのかとか、そのときに欲しい環境ってどんなのかな」と、自らも新しいライフスタイルを探求し続けているとおっしゃっていました。

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2025年08月06日

コモングラウンドが実現する新しい教育の形

今週のゲストは建築家で東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さんです。

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豊田さんが提唱する「コモングラウンド」の実証実験として、長野県茅野市と渋谷を繋いだ実験が行われました。

実際の実証実験では、高校生16人が参加し、ヨガの遠隔授業を受けました。参加者はヘッドマウントディスプレイを装着し、渋谷のヨガの先生が目の前にいるように見える状態で授業を受けます。
「ヨガの先生からも自分のポーズが見えてるんですね。ヨガの先生から見ると、ちょっと肘の角度がおかしいなと思ったら、ここをもうちょっと上げて、とかほらここに合わせてって、ほら、ここ、うん、こういうふうってやっぱり言葉が伝わらないじゃないですか。それが姿勢として目の前に見えるので、ヨガとか空手とか、そういうものが遠隔でも教えられる」

この技術により、東京で取得したデータを大阪の人に伝達するなども可能になり、離れたところにいる人が空間を重ね合わせることができるようになります。

「地方でも例えば学校が維持できなくなってると、これ単純に生徒の数が減ってるだけでもなくて、先生が全科目の人を維持できないとか、そういうことの方がむしろ問題だったりする。こういうコモングラウンド環境を使うと、東京の理科の先生が長野でも教えられるとか、山奥の校舎で数学を教えられるとか、いろんなワークショップができるみたいな関係ができる」

この技術の実現を後押しする方法について尋ねたところ、豊田さんからこんな答えが返ってきました。

「食わず嫌い的なことを、もうやめてと言うと変ですけど、、、色々どんどん楽しみながら捉えてもらえるといいかなと思っていて。東大でも体験していただけますし、遠隔授業以外にもエンタメで何ができるかとか、いろんな用途を探りながらやってるので、ぜひやってみて、こういうのもいいんじゃない?というアイデアをいただけるとすごく嬉しいです」

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2025年08月05日

アジアから発信する新しい建築の形

今週のゲストは建築家で東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さんです。

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アメリカから帰国後、豊田さんは建築事務所「noiz」を立ち上げました。
安藤忠雄建築研究所でのアナログな経験と、ニューヨークの『SHoPArchitects』でのコンピュテーショナルデザインという両極端の経験を経た故のものでした。

事務所名「noiz」について、豊田さんは、、、

「コンピュテーショナルデザインって当時、まだ日本とかアジアにほとんど入ってきてなかったんですね。それをアジアっていうこれまでと違う土壌でやった時に、どうなるのかってのは興味があって。予定調和を壊すというか、これまでの既成の価値観の外側にある価値を探ってみようと。ノイズっていうのはそういうことですよね。これまでのわかりやすい音楽じゃないところに新しい価値を探してみようみたいなことで、こういう名前になりました」

事務所はコロンビア大学の同級生で、プライベートのパートナーでもある台湾人のサイさんと共同で立ち上げ、台北と東京に拠点を構えています。

また豊田さんは現実世界とデジタル世界が重なり合う共有基盤「コモングラウンド」を提唱されています。これは元々AI研究の世界の概念で、京都大学の西田豊明先生が提唱されたものを空間に拡張したものです。

西田先生の理論について、豊田さんはこう説明します。

「西田先生は会話の中で、言葉が持つ辞書としての意味の背景に我々共通の認識というか理解があって、それがあるから秋の夕暮れって言ったときに赤とんぼの風景が浮かんだりとか夕焼けの空が見えたりとか、そういうものが共有されてるから会話が成り立つんだっていうのをおっしゃってて、それを僕らは空間に拡張したんです。」

ロボットに『ドア』といった時、何を想像するのか、、、
もともとの意味を拡張し、『空間理解をデジタルの中に記述する』というものだそう。

またさらに、ゲームの世界の概念を取り入れたことがポイントだといいます。

「建築だとCADとかBIMっていう設計図としての3Dデータ作るんですけども、これって動かないんですよ。地図とか建築図面が見るたびに内容が変わってたら困るので。でもゲーム空間ってもう100分の1秒単位で空間の記述をどんどんアップデートしていくから動いて見える。今は実空間でロボットとかモビリティを扱おうとすると、結局動的に記述を更新し続けなきゃいけないので、ゲームエンジンっていうものを建築とか都市で使ってみようっていうのを今、コモングラウンドの中でやっています。」

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2025年08月04日

デジタル技術で建築の新たな可能性を切り拓く

今週のゲストは建築家で東京大学生産技術研究所特任教授の豊田啓介さんです。

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豊田さんは1972年生まれ、東京大学建築学科を卒業後、安藤忠雄建築研究所を経て、コロンビア大学建築学部修士課程を修了。建築デザイン事務所「noiz」代表として、コンピュテーショナルデザインを積極的に取り入れた活動を展開されています。

コンピュテーショナルデザインとは、デジタル技術を使ってデザインをすること。
ただ図面を引くだけではできない形や発想を、デジタル技術を使うことで可能にしていこうという取り組みです。

これはAIとは異なり、あくまで人間が行うもの。
「建築家が、これまで通りに図面を書くとか模型を作るっていう発想だと、出なかったようなアイディアとか形を、新しいコンピュータの造形や制御する能力を使うことで、いろいろと違う可能性が見えてくるんです。」

豊田さんは大学卒業後、安藤忠雄建築研究所に入られ、
1996年から2000年まで在籍。
淡路夢舞台や四国の光明寺、フォートワース現代美術館のコンペなどを担当されたそう。
その後はコロンビア大学の建築計画歴史保存学部へ留学、修了後はニューヨークの建築事務所「SHoP」で勤務され、ここはコンピュテーショナルデザインの最先端事務所でした。
「安藤事務所がすごくアナログで、いい意味でアナログですごく20世紀的な建築をやっていたのに対して、やっぱりせっかくなんで、全然違う方を極端にやってみたいなと思って」

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