2025年09月02日

「問い」から考える防災の多様性

今週のゲストはビジュアルデザインスタジオWOWのディレクター、大内裕史さんです。

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21_21 DESIGN SIGHTで11月3日まで開催中の企画展「そのとき、どうする?展」
参加型の展覧会となっており、会場には10個の「問い」が用意されています。

また問は「安全な場所ってどこ?」「十分な備えってどれくらい?」といった抽象的なものです。

「最初はもう少し具体的な状況設定をしようとしていました。例えば『過去にないぐらいの大雨が起きて、どうする?』みたいな。
 ただ、状況設定してしまうとそれに対してのアクションを具体的に答えてしまうので、
 もう少し広く、その問いだけで、その人が普段思い込んでいるところもあぶり出されるといいなと思って、
 少しそういった問いにしています」

最初の問い「安全な場所ってどこ?」では、災害の可視化としていくつものモニターが展示。
東京直下型地震の被害想定をビジュアライズしたウェブサイトや、川の流域を地図にしたものなど、
ほとんどがウェブでアクセスできる一般公開されているものとなっていました!

また「十分な備えってどれくらい?」という問いに対するパブリックアンサーは「7日間」。
かつて推奨されていた3日間から大幅に増えています。
展示では実際の7日分の非常食が並べられていますが、これは食にこだわりのあるスタッフが
「私ならこうする」という献立を作ったもので、実際には家族構成や食事回数によって必要量は変わるといいます。

staff| 21:00 | カテゴリー:

2025年09月01日

防災をデザインの視点で考える企画展「そのとき、どうする?展」

今週のゲストはビジュアルデザインスタジオWOWのディレクター、大内裕史さんです。

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大内さんはWOWでディレクターとして活動されており、TVCMやアプリケーション、ミュージックビデオなど
メディアを問わない表現活動を得意とされています。
また東北出身という背景から震災後は地域でのボランティア活動にも参加されています。

9月1日は防災の日。現在、六本木の21_21 DESIGN SIGHTでは、
WOWがディレクションする企画展「そのとき、どうする?展 -防災のこれからを見渡す-」が開催中です。
この企画展の狙いについて、大内さんはこう説明します。

「21_21 DESIGN SIGHTは日常の物事をテーマにしてデザインの視点で企画展を行う場所です。防災の知識や技術を一方的に伝えるというよりは、来ていただくお客様たちに『自分ならどうするか』『そのとき、みんなはどうするのか』という、自分ごととして考えてもらえるような展覧会を構成しています」

展覧会では10個の「問い」を設けており、「安全な場所ってどこ?」「十分な備えってどれくらい?」といった
防災にまつわる問いが、会場全体を見渡せるように展示!
またサブタイトルの「防災のこれからを見渡す」には、
様々な状況や可能性を広く見渡しておくという意味が込められています。

大内さん自身も東日本大震災で家族が陸前高田市で被災し、家を失った経験を持っていらっしゃいます。
そんな大内さんにとって防災とは「想像を超える状況だった。普段から準備してもしきれない部分があることを痛感した。無理なくでも続けられることでいいから、やっぱり備えておく必要がある」と話していらっしゃいました。

防災の専門家ではないデザイナーたちが、デザインの視点から防災を考え直す。
誰もが自分ごととして防災を考えるきっかけとなる企画展となっています!

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2025年08月28日

図書館の新たな役割と未来への展望

今週のゲストは東京都立多摩図書館情報サービス担当の井上郁哉さんです。

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都立多摩図書館では現在、「1年後、5年後、10年後、どんなふうに生きていく?」という青少年向けの企画展示を10月1日まで開催しています。

中高生世代におすすめの本や、将来について考えることができる本を展示しており、学校以外を舞台に活躍する10代が出てくる本や、大学生活、仕事、家族のあり方など、今後の人生に関わる可能性があることについて書かれた本が並んでいるそうです。

「これらの企画イベントについては、図書館の司書がそれぞれアイディアを出し合って、最終的には多数決であったりとか話し合いとか、あとはその司書個人個人がどういった本を紹介したいかとか、職員全員で話し合って決めていっています」

またデジタル化が進む中での図書館の存在意義について尋ねると、井上さんは現代の図書館の変化を指摘しました。電子書籍など図書館に来なくても本が読める時代になってきている一方で、カフェが併設されている図書館やイベントを多く実施している図書館も増えており、本を読んだり借りたりする場所としてだけでなく、人々の日常生活を支えたり、来館者同士の交流の場所となるような使い方がトレンドになっているといいます。

ちなみに井上さんが行ってみたい図書館はフィンランドの「ヘルシンキ中央図書館」。
2019年度のPublic Library of the Yearに選ばれたこの図書館は、本や雑誌だけでなく3Dプリンターやゲームの貸し出し、ワークショップスペースなど、従来の図書館の枠を超えた機能を持っているそうです。
本を通じて人々をつなぎ、コミュニティの拠点として進化し続ける図書館の姿を垣間見ることができました!

staff| 21:00 | カテゴリー:

2025年08月28日

雑誌でつながる学びの場「東京マガジンバンクカレッジ」

今週のゲストは東京都立多摩図書館情報サービス担当の井上郁哉さんです。

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都立多摩図書館では「東京マガジンバンクカレッジ」という活動を展開しています。
これは10年前の国分寺移転時に始まった取り組みで、「雑誌の魅力を知る、作る、伝える」というコンセプトのもと、雑誌を仲立ちとした学びや交流の拠点づくりを目指しているそうです。
カレッジではパートナー制度を実施しており、雑誌やカレッジの活動に興味がある個人や都内の団体が参加できます。パートナーになると、年に1回程度の交流会への参加や、イベント情報・雑誌記事の紹介を掲載したメールマガジンの配信を受けることができます。

カレッジでは毎年雑誌に関連したイベントを開催!
今年6月末には国立天文台の方を招いて天文関係のイベントを実施しました。
講師は天文雑誌に連載記事を書いており、その連載の裏話や、水星をテーマにした天文雑誌との思い出を語る講演会となったそうです。
講演会はパートナーに限らず誰でも参加可能で、パートナー制度も無料だといいます。

また図書館の重要なサービスがレファレンスサービス。
皆さんは利用されたことありますか?

これは調べたいことや探している資料について、司書が必要な資料や情報を案内するサービスです。来館してカウンターで質問するほか、電話や手紙、メールでも受け付けているそうです。ただし医療や法律の診断、学校の宿題や懸賞はがきのクイズなどは対象外となっています。

staff| 21:00 | カテゴリー:

2025年08月26日

創刊号から絶版誌まで収集する東京マガジンバンクの世界

今週のゲストは東京都立多摩図書館情報サービス担当の井上郁哉さんです。

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東京マガジンバンクは、書店で見かける一般的な雑誌から、専門誌、大学や企業が発行する学術誌まで幅広く収集しており、令和7年3月末時点で約1万9000タイトルを所蔵!特に女性誌と鉄道関連誌を重点収集しています。

「東京マガジンバンクを開設した当時、様々なジャンルの雑誌の中から利用者ニーズが高い分野、誰もがイメージしやすい分野、文化として残っていく分野、そして利用促進につながったり戦略的サービス展開に活かせる分野ということで、女性誌と鉄道誌の二つのジャンルを選定して重点収集しております」

またユニークなものが創刊号コレクション。最も古いものは明治10年(1877年)に出版された経済誌「中外鉱業新報」だといいます。明治時代は商工業やビジネス誌が多く創刊され、明治30年創刊の「実業之日本」なども所蔵されています。

さらに東京マガジンバンクでは、現在刊行されている雑誌だけでなく、休刊・廃刊したものも基本的に永年保存しており、現在休刊しているものだけで約1万数千タイトルを所蔵しているそうです。また地方誌の収集にも力を入れており、九州から北海道まで日本全国の雑誌を幅広く収集しています!!

貸出はしていませんが、どなたでも閲覧可能です!ぜひ一度足を運んでみては??
https://www.library.metro.tokyo.lg.jp/guide/tama_library/

staff| 21:00 | カテゴリー:

2025年08月25日

雑誌文化の保存と発信に取り組む東京マガジンバンク

今週のゲストは東京都立多摩図書館情報サービス担当の井上郁哉さんです。

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井上さんは1996年福岡県生まれ。明治大学国際日本学部を卒業後、一般企業を経て、都内の区立図書館で働きながら司書資格を取得されました。2021年から東京都立多摩図書館で、週刊誌から学術雑誌まで幅広い雑誌を収集・提供する「東京マガジンバンク」の運営に携わっています。

都立図書館は中央図書館と多摩図書館の2館で構成され、それぞれが機能を分担してサービスを提供しています。国内の公立図書館の中でも最大級の資料を所蔵し、調査研究から身近な生活情報まで幅広く支援するとともに、都内の区市町村図書館へのバックアップを行う「図書館の図書館」としての役割も果たしているそうです!

東京マガジンバンクの歴史について、井上さんは、こうお話してくれました。
「多摩地域にあった旧都立立川、青梅、八王子図書館という3つの図書館を統合する形で、1987年に都立多摩図書館ができました。その3館のうち立川図書館が逐次刊行物センターという機能を持っていて、そこで雑誌の収集を始めていました。それを継承する形で2009年に東京マガジンバンクが開設されました」

都立多摩図書館は、JR中央線・武蔵野線の西国分寺駅から徒歩7分、
都立武蔵国分寺公園に隣接した場所にあります。
館内には閲覧室のほか、カフェスペースやセミナールームも備えています。
開館時間:
月〜金曜日:午前10時〜午後9時
土・日・祝休日:午前10時〜午後5時30分

どなたでも利用可能、
仕事帰りの利用者にも配慮した運営となっています!

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2025年08月21日

地名の変遷と世界の地図文化

今週のゲストは、地図研究家の今尾恵介さんです。

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今尾さんは地名マニアとしての一面もあり、昨年PHP研究所から『地名の魔力』という本を出版されました。地名には興味深い歴史があるといいます。

銀座の地名について、今尾さんはこう語ります。
「銀座ってブランド地名ですよね。関東大震災の後に震災復興事業をやったときに、町の名前を統廃合したんですけど、そのときに銀座がものすごく増えたんです。それまで1丁目から4丁目の中央通り沿いにしかなかったのが、5丁目から8丁目まで出てきて、さらに幅が広くなったんですね。」

昭和30年頃には「尾張町」などが「銀座東」になり、結果として震災以前からあった銀座は、現在の銀座の面積の9%しかないそう...!!

そして5月に出版された『地理院地図の深掘り』。
実は今尾さんでさえ『地理院地図』の全貌を知らないとのこと...!!
「あまりにも機能が多くて紹介しきれなかった」と謙遜しつつ
「地理院地図の初心者の方がいらしたら、読んでいただくととても参考になると思います」とおっしゃっていました。

住んでいる地域や、働いている場所など、身近な場所を見てみると、新しい学びや発見があるかもしれません!!是非みなさんも、使ってみてください!
地理院地図はこちらから、アクセスできます!

また今尾さん、今後の計画について伺ったところ、、、
『鉄道の山越え』をテーマにした本を来年夏頃に出版予定!!
日本だけでなくヨーロッパも視野に入っているとのこと...!

「日本のものが中心なんですけど、清水トンネルや碓氷峠を越えるために、昔から苦労して線路を敷いてきたわけですが、その辺をテーマにした本を出すつもりでいますね。」

地図神さんの新たな作品...!楽しみです!

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2025年08月19日

国土地理院が提供する多機能な地理院地図

今週のゲストは、地図研究家の今尾恵介さんです。

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今尾さんは、この5月にPHP研究所より新刊『地理院地図の深掘り』を出版されました。
地理院地図とは、国土地理院が提供するウェブ地図のことです。国土地理院は日本の地図の大元を作っている機関で、従来は紙の地形図を出版していましたが、10年以上前からインターネットで無料で見られる地形図の提供を始めました。

地理院地図の特徴について、今尾さんはこう説明します。

「最初は地形図機能だけだったんですけど、そのうち土地の高さ低さがわかるみたいな機能も加わりました。画面の中心にプラス形があって、そこの経度・緯度、土地の高さが表示されるんです」

さらに、距離測定機能では自宅から学校までの241メートルといった身近な距離から、東京からウラジオストックやロンドンまでの距離も測ることができます。

特に注目すべきは、地形分類図というレイヤー機能。
これを重ねると、泥が溜まってできた沖積地は薄緑色、安定した台地はオレンジ色、盛土は赤、切土は黄色で表示され、土地の履歴が一目でわかるといいます。

J-WAVEがある六本木は今尾さんによると「六本木は非常に安全な場所」だそうです。

「武蔵野台地という非常に昔から台地だったところで、そのてっぺんの面なので、地盤が安定している。周辺には谷が入り込んでいて、その谷のてっぺんが六本木なんです」

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2025年08月18日

地図から風景を読み取る楽しさ

今週のゲストは、地図研究家の今尾恵介さんです。

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今尾さんは1959年横浜市生まれ。これまでに多くの地図関連書籍に関わる地図研究の第一人者で、著書には『地図マニア空想の旅』や『地図帳の深読み』シリーズ、また5月には新刊『地理院地図の深掘り』(PHP研究所)が発売されました。これまでにかかわった本は既に100冊以上にのぼります。

地図との出会いは中学1年生の社会科の授業でした。今尾さんはこう語ります。
「横浜の西の方なんで横浜西部という2万5,000分の1の国土地理院の地形図なんですけど、それを見て、今までは神奈川県全図だとか関東地方の図みたいのしか見たことなかったんで、これはすごいなと。校舎がちゃんとこっちの校舎とあっちの校舎が分かれて書いてあって、プールも青く塗られていたんで、これすごい地図だなと思って一気にはまっちゃった」

もともとは音楽系雑誌の編集者だった今尾さん。大学時代はオーケストラに所属し、現在もアマチュアオーケストラ「新交響楽団」で打楽器奏者として42年間活動を続けています。

多くの人にとって地図は道を調べるツールですが、今尾さんにとっては少し違います。
今尾さんによると、地形図は「風景が見える地図」だといいます。

「地形図っていうのは風景が見られる地図なんですよ。ここが針葉樹林であるとか田んぼであるみたいなそういうのが記号で書いてありますので。スマホで見る地図なんていうのは道案内には関係ないので地図記号がないんですね。等高線もないので、この場所が盛り上がってるだとか崖になってるみたいなものがあんまりわかんないんです。」

地図から立体的な風景を頭の中に描き出す、スマホの地図アプリではわからない、地図の魅力を教えていただきました!

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2025年08月14日

ごみ収集が担う新たな福祉的役割

今週のゲストは立教大学コミュニティ福祉学部教授の藤井誠一郎さんです。

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清掃事業が従来のごみ処理を超えて、福祉的な役割を担うようになっているそう。

例えば高齢者のごみ出し困難者に対する「訪問収集」では、職員が直接家庭を訪問してごみを収集します。これは単なるごみ収集ではなく、安否確認の機能も果たしています。

「ごみが出ているというのを認識することで、これ安否確認になるわけです。二、三日出てなければ福祉の部署に電話して、これどうなってるんでしょうかというところを見に行っていただく。」

また札幌市での印象的な事例もご紹介いただきました。
というのも、雪の多い冬季には、訪問収集の職員が高齢者にとって唯一の話し相手になることもあるそうです。わずか3分程度の会話でも、高齢者の方が楽しみにしている様子を目の当たりにし、まさに福祉サービスだと実感したといいます。

東京23区では防犯上の理由から外に出されたごみを収集するだけですが、地方では玄関先でのコミュニケーションも行われており、住民との対話がごみ収集を通じて実現されています。

最後に藤井さんは現業職の価値を強調していらっしゃいました。
自治体では人員削減や委託化が進んでいますが、現業職だからこそできる住民サービスがあり、彼らが新たな街づくりや住みやすい地域社会づくりに貢献できるとおっしゃっていました。

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