ファースト・アルバム「SIM SIM SIM」が「2022年ブラジル・ディスク大賞」第1位を獲得、2023年夏の初来日公演も大絶賛を浴びたブラジルZ世代のスーパー・グループ、バーラ・デゼージョのメンバーの一人、ゼー・イバーハ(Zé Ibarra)。昨年リリースした全曲、弾き語りのファースト・ソロ・アルバム「マルケス256」は「2023年ブラジル・ディスク大賞」第7位にランクインしました。
21世紀の "ブラジルの声" との呼び声も高い27歳の俊英が2024年4月、ソロ・ツアーで初来日しました。
ゼーがバーラ・デゼージョ結成前に参加していたバンド、ドニカのメンバーでもあるトン・ヴェローゾ(カエターノ・ヴェローゾの末息子)、ドニカとバーラ・デゼージョの盟友ルーカス・ヌネス、そしてバーラ・デゼージョの女性陣ジュリア・メストリとドラ・モレレンバウムは全員、学校のクラスメートでした。
ゼー・イバーハは3歳の頃から、音楽だけでなく「音」に関心を持つようになりました。
家の近くを流れる川の音を聞くのが好きで、ビーチに行った時は、目を閉じて海の音を聞いていました。
音楽が好きになったのは、家族の影響です。
お父さんはサンバ、ショーロ、ボサノヴァといったブラジルの音楽を、お母さんはブラジルや海外のポップスを、お婆さんはクラシ ックを聴いていました。
様々な音楽を聴いて育ち、6歳の時にピアノを買ってもらい、ピアノとクラシックを学び、その後、ガットギター、そしてドラムスの演奏も始めました。
11歳で、学校の同級生と一緒に作ったグループはパーカッションのグループで、メンバーの一人が、ルーカス・ヌネスでした。
ゼー、ルーカス、トン・ヴェローゾ、ジュリア・メストリ、ドラ・モレレンバウムは全員、同級生で、クラスメートでした。
そして、ルーカス、トン、そのほかの友人たちと、ドニカを結成。さらに、ルーカス、ジュリア、ドラと、バーラ・デゼージョを結成。
ゼーは、「とても自然な流れ。大きな情熱から生まれたことです」とコメントしました。
Bala Desejo "Sim Sim SIm"
ゼー・イバーハは、いろいろな楽器に興味を持って演奏しましたが、最初の頃は、歌には興味がなかったそうです。
4歳の時から打楽器を叩き始め、住んでいたマンションの階段室にパーカッションを持ち込んで叩いていました。階段室だと、音が大きく響いて、リバーブもあって、気持ちよかったんです。
10歳でギターを弾くようになってから、歌に興味を持って、歌い始めました。
階段室にギターを持って行って歌ったら、声の響きが良く、歌が上手くなったように感じたので、
毎日2時間、階段室でギターを弾いて歌うことを1年間、続け、そして歌手になりました。
そんな体験があったので、自分のソロ・アルバムを作る時はぜひ階段室でレコーディングしたいと思い、ドニカやバーラ・デゼージョのメンバーでもある幼馴染のルーカス・ヌネスに、レコーディングのエンジニアを、お願いしました。
階段室なので、エレベーターの音や、犬の鳴き声など、いろんなノイズが入ってきましたが、ゼーにとっては、自分が歌うことの第一歩となった場所で、レコーディングしたい。そんな願いがあったそうです。
ゼー・イバーハ「マルケス、256」
Zé Ibarra / Marques,256.
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自分で作詞作曲を始めた11歳か12歳の頃、ミルトン・ナシメントのアルバム「クルビ・ダ・エスキーナ」に入っていた曲「Cais(カイス)」を初めて聴いて夢中になり、自分がやりたいのはこういう音楽で、ミルトンの音楽は、自分の行く道を照らす灯台のようだと思ったそうです。
Milton Nascimento, Lô Borges "Clube da esquina"
プロとしての出発点となったバンド、ドニカのメンバーの一人が、トン・ヴェローゾ。カエターノ・ヴェローゾの息子です。
カエターノが、仲の良いミルトンに連絡して、ミルトンがドニカのファースト・アルバムにゲストで参加することになりました。歌った曲が「Pintor(ピントール)」。ゼーと、トンの共作です。
Dônica "Continuidade dos parques"
その後、ドニカが活動を停止した頃、ゼーは、ミルトンのスタッフから電話を受け、ミルトンのコンサートツアーにバック・ヴォーカルで参加しました。ツアー・バンドに参加し、バック・ヴォーカルだけでなく、ミルトンとデュエットし、ギターやフルートも演奏しました。
「とても栄誉であり、とてつもないスケールの学校でした。
ミルトン・ナシメントの音楽は、僕の音楽性に最も大きな影響を与えています」。
生演奏で歌った曲は、ゼーが作詞作曲した「Itamonte(イタモンチ)」。
イタモンチはミナスジェライス州の、山や滝などに囲まれた場所の名前で、そこに別荘があって幼い頃、よく訪れて滞在していまました。インタビューの最初に話したように、川に行って水の音を聞くのが大好きだったそうです。
「今まで生きてきた中で、最も素敵な思い出の場所に捧げて作った曲」とコメントして歌ってくれました。
Zé Ibarra, Dora Morelenbaum, Julia Mestre "Live at Glasshaus"