
ポルトガル語圏の西アフリカの島国、カーボ・ヴェルデのシンガー、ナンシー・ヴィエイラ。
ブラジルのシンガー・ソングライター&ギタリスト、フレッヂ・マルチンス。
現在の活動拠点、ポルトガルのリスボンで出会い、今年、コラボレーション・アルバム『エスペランサ〜希望』を日本のリスペクトレコードからリリース。7月に来日公演を行ないました。
▼フレッヂ・マルチンス
「2012年、リスボンに引っ越して新しいアルバムを録音するときに、プロデューサーでピアニストのパウロ・ボルジスから、ナンシー・ヴィエイラという素晴らしい歌手がいると何度も言われ、彼女のアルバムを聴いて、録音に招きました。
私が作った「オ・サンバ・ミ・ヂス」という曲をデュエットしましたが、この曲は典型的なリオのサンバで、リオに住んでいる人でないと、歌うのは簡単ではありません。
でもナンシーは、エレガントに、自分のやり方で歌いました。それは、リオの人そのもので、さらに彼女の歌は、新たな要素も反映しました。
その時から、さらにナンシーのファンになり、友人になり、一緒にコンサートも行なってきました。
そして、念願がかなって、アルバム「エスペランサ」を、一緒に作りました」
▼ナンシー・ヴィエイラ
「私も、友人のパウロ・ボルジスから、フレッヂ・マルチンスという素晴らしいシンガー・ソングライター/ギタリストがいると、いつも聞いていました。
初めて共演した彼の曲「オ・サンバ・ミ・ヂス」を大好きになりましたが、レコーディングにあたって、私はカーボ・ヴェルデの人間のやり方で、歌いました。モルナ、コラデイラ、フナナ、バトゥーコといった、カーボ・ヴェルデの伝統的な音楽のエッセンスを、サンバにミックスしたんです。
それ以来、コンサートを一緒に行ない、2人のアルバムを作ることを夢見てきました。そして、日本のリスペクトレコードによって、夢が実現しました」
▼フレッヂ・マルチンス
「9歳か10歳の頃、ジョアン・ジルベルトが歌うジルベルト・ジルの曲をラジオで聴き、ブラジルの人々のスピリットを歌っていることに感銘を受けました。
ブラジル人の出身地には、アフリカ、イベリア半島などがあり、先住民もいます。
そうした多彩な文化が、ブラジルの音楽の中でミックスされていて、カーボ・ヴェルデの音楽にも、同じことが当てはまります。
私たちの出会いは、共にポルトガルの植民地だったブラジルとカーボ・ヴェルデの、長い歴史の上に成り立っていると思います」

スタジオライヴの生演奏では、CDの収録曲から2曲、歌ってくれました。
1曲目が「青い海」という意味の曲「マル・アズール」。
ナンシーによれば、これはモルナというカーボ・ヴェルデの音楽を代表するスタイルで、作者は、ベレーザこと、フランシスコ・シャヴィエール・ダ・クルース。カーボ・ヴェルデの偉大なシンガー、セザリア・エヴォラがレコーディングした曲を、モルナにボッサをミックスして歌い、演奏しました。
2曲目が「ハミングバード」という意味の、平和への願いを込めた曲「コリブリ」。
作曲したフレッヂ・マルチンスは、ブラジルを出てポルトガルに住んでから15年たちますが、自分は今でも100パーセント、ブラジル人なんだと話していました。
ただ近年のブラジルは、暴力、差別など、日常生活の中に問題が多く、それがとても悲しい。でも自分は、音楽を通じて、なんとかしていきたい。そんなときに、ハミングバードがヒントを与えてくれた。夢の中でなっていたメロディーをもとに、マルセロ・ヂニスに歌詞をつけてもらった。
